Q.
ある病院で乳がんと診断されました。診断、治療法、入院期間など確認したいことがあり、セカンドオピニオンを受けたいのですが・・・(48歳、女性)
A.
病院で何らかの治療を受けるときには、患者さん自身が十分に納得していることが大切です。最初の診断結果や治療法に納得できなかったり、あるいは念のために確認したいときは、積極的にほかの専門家の意見を聞くべきでしょう。セカンドオピニオンは、原則的にその病気の専門施設ならばどこでも受け入れてくれるはずです。ただし、いたずらにたくさんの人の意見を聞くことが、かえって迷いにつながることもありますので、乳がんという病気について、また診断や治療法などについて、ある程度基本的な知識を持った上で受診してください。なお、できれば前医の資料を持参するほうがよいでしょう。
Q.
最近乳がんと診断され、脇のリンパ節をすべて切除する必要があるといわれました。どうしても切除しなければいけないでしょうか?(48歳、女性)
A.
乳がんの転移は乳房に最も近い脇の下にあるリンパ節から起こることが多いので、手術の際はこのリンパ節を切除する場合があります。しかし、最近の乳がん手術は、乳房もリンパ節も切除する範囲を必要最小限に縮小する傾向にあります。この必要限度を判断する有力な手段が、「センチネルリンパ節生検」です。「センチネル」とは「見張り」という意味です。センチネルリンパ節は、乳がんが最初に到達するリンパ節とされ、ここに転移がなければ、脇のリンパ節転移はないと考えられます。従って、それ以上のリンパ節切除は不要です。担当の先生にもう一度ご相談されるか、乳腺専門施設で新たに意見を伺ってみたらいかがでしょうか。
Q.
1年前に乳がんで手術を受けました。現在もがんの治療は続いていますが、健康食品も試してみたいと思います。いかがでしょうか?(47歳、女性)
A.
健康食品や民間療法に関する情報は、それらを利用することで体調がよくなったという体験談とともに盛んに紹介されており、試してみたいと考える患者さんは少なくないようです。しかし、いわゆる民間療法の効果は絶対的なものではありません。実際に、その作用や効果について科学的に証明されたものはほとんどないでしょう。中には、含まれる成分が治療に用いられる薬剤と反応して、思いがけない副作用をおこすこともあります。健康食品、民間療法を試してみたいのであれば、主治医や看護士さん、薬剤師さんなどと十分に相談してください。特に手術後の治療が続いている場合などは慎重に考慮しましょう。
Q.
46歳の女性です。先日、他の病院で乳がんの手術を受けました。今、手術後の抗がん剤治療をすすめられています。受けた方がいいでしょうか。
A.
乳がんは、手術を行いがんが完全に取りきれたと思っても、30%前後の人に再発がみられます。再発のほとんどは、肺や骨、リンパ節などの手術した部位より遠く離れたところに現れます。これは、手術の前からがん細胞が血液やリンパの流れにのり、わずかでもすでに乳房以外の体のどこかに潜んでいるからです。術後の抗がん剤やホルモン剤投与はこのようながん細胞を抑制し、明らかに再発を少なくします。しかし、薬には多少の副作用があります。また、手術後の薬による治療は不要な場合もあります。主治医の先生と十分話し合い、納得して今後の治療を受けてください。
Q.
なんとなく体の調子が悪くて、ある病院を受診し、甲状腺を調べるようにいわれました。甲状腺とその病気について教えてください(35歳、女性)。
A.
甲状腺は、人が生きていくのにとても大切なホルモンを作って分泌しており、首のやや下で蝶々が羽を広げたような形をしています。甲状腺から出されるホルモンは小児期には発育や成長に、成人では全身(脳、心臓、消化官、骨、筋肉、皮膚、その他)の新陳代謝を活発にする働きを行い、精神神経や身体の活動の調整に働いています。このホルモンの分泌がおかしくなった場合は、全身に様々な症状が現れ、どこが悪いのか判らず「いつも調子が悪い状態」になってしまいます。そして周囲の人からは、気のせいとか、ただの怠け者などと誤解されやすくなります。甲状腺の病気は、ご質問の方のような20代から40代の女性にたいへん多いのですが、なぜ女性に多いかはわかっていません。甲状腺ホルモンの働きが問題となる病気としては、ホルモンが出過ぎるバセドウ病、逆に少なくなりやすい橋本病が代表的です。これらの病気はその多彩な症状より「自律神経失調症」や「更年期障害」、だるさや無気力より「うつ病」、動悸や息切れより「心臓病」、体重減少より「がん」、むくみより「腎臓病」、かゆみより「蕁麻疹」、血圧が上がるので「高血圧」、肝障害により「肝臓病」、高血糖や尿糖より「糖尿病」、物忘れしやすくボーッとしていることより「痴呆」などいろいろな病気と間違えられやすくなります。しかし、甲状腺由来の病気と正確な診断を受け、適切な治療を受ければ、見違えるほど元気になり、健康人と同じように運動、妊娠、授乳、仕事などができるようになります。どうも体の調子が悪くて、すっきりしないと思っている方、是非一度、甲状腺を検査してみてください。
Q.
検診で首のしこりを指摘され、ある病院で甲状腺乳頭癌と診断されました。この病気について教えてください(51歳、女性)。
A.
甲状腺がんは、1乳頭癌、2濾胞癌、3髄様癌、4未分化癌、5悪性リンパ腫など5つのタイプに分かれます。この中で最も多いのはご質問の乳頭癌であり、甲状腺がん全体の80〜90%を占めています。その特徴はゆっくり発育することであり、何年たってもほとんど変化がないことがあります。したがって、一般的に“たちのよいがん”と考えてよいでしょう。しかし、ある時期から急速に進行し、非常にたちの悪いがんになることもあるので要注意です。また、乳頭癌は、甲状腺近くのリンパ節への転移が多いことも特徴のひとつですが、適切な手術によりほとんど治ってしまいます。専門施設での治療をお勧めします。
Q.
授乳を始めて7ヶ月です。最近、右の胸にしこりを触れるのですが、乳がんでしょうか?とても心配です(28歳、女性)。
A.
母乳が出るころには、ミルクが何らかの原因で詰まり、その結果、お乳の管の一部が膨らんでしこりを作る時があります。乳瘤と呼ばれるしこりですが、もちろん乳がんとは違って良性であり、命には全く影響ありません。また、元々存在した良性のしこり(多くは線維腺腫)が、授乳期のホルモンの変化で、周りの正常乳腺の発達と同じように大きくなる場合もあります。このように授乳期のしこりの大半は良性で問題ありませんが、乳がんが存在することもあります。今回、あなたには超音波やマンモグラフィを使用した乳がんの画像検査を受けることを是非お勧めします。心配を抱えるよりも、しっかり検査することが、一番安心できる方法でしょう。
Q.
数年前より左乳房に小さなしこりがあります。病院を受診し、すぐに手術を勧められました。どうすればよいでしょうか(41歳、女性)。
A.
乳房のしこりは、超音波、マンモグラフィなどの画像検査を行うとある程度良性、悪性の診断が可能となりますが、確実に診断するためには、細い針でしこりの細胞をとる(細胞診)ことが必要であり、これで診断がつかない時はもう少し太い針で組織をとる(針生検)ことになります。通常はどちらかでほとんど診断は可能となります。これらの検査で良性と判断できれば、基本的には手術をする必要はありません。したがって、手術よりも、まずは細胞診や針生検のほうを優先すべきでしょう。手術はこれらの検査でどうしても診断できない時に行います。もう一度担当の先生とよくご相談してください。
Q.
右の乳房に2cmほどのしこりができて、ある病院で線維腺腫といわれました。手術は必要でしょうか?教えてください(22歳、女性)。
A.
線維腺腫は若い女性に多い乳腺の良性腫瘍です。触ると、硬くて丸く、くるくるとよく動くビー玉のようなしこりであることが特徴です。しこりは3cm以上になることは少なく、時に自然になくなってしまう場合もあります。通常、痛みはありません。診断は、触診と超音波、マンモグラフィなどの画像検査、そして細胞診を行えばほぼ確実です。線維腺腫は、生命に影響のない良性の疾患であるため、基本的に手術の必要はありません。しかし、ごくまれに乳がんとの区別がつきにくい場合やしこりが急に大きくなって3cm以上になるような場合があります。その際には手術が必要となりますが、あなたの場合は経過観察でよいと思います。
Q.
先日、右胸のしこりに気づきました。どんな病気でしょうか。また、男性でも乳がんになりますか。教えてください(52歳、男性)。
A.
男性でも乳腺が腫れて、しこりを触れるようになることがあり、一般に“女性化乳房症”と呼ばれます。しこりは両側でなく、片方だけの場合もあり、原因として、薬剤、腫瘍、ホルモンの異常、外傷などがあります。もし、常用している薬があれば、その副作用について調べてみましょう。病院から処方されている薬でしたら、勝手に中止せず、担当の先生と相談して下さい。薬を変更するか中止することによって、薬剤性の女性化乳房症なら6ヶ月ほどで軽快します。なお、男性でも乳がんの可能性は否定できません。乳がんでないことを確認するためには超音波などの精密検査が必要ですので、乳腺専門外来を一度受診してください。
Q.
乳がんを治療するときに”化学療法”という言葉をよく聞きます。化学療法について教えて下さい
A.
抗がん剤を用いた治療を化学療法といい、注射薬と飲み薬があります。化学療法を使うのは、手術前にしこりを小さくする場合、術後の再発を防ぐ場合、もしくは再発したときなどで、治療は入院あるいは外来通院で行います。外来通院の場合、乳腺専門クリニックでは長時間の点滴の間、BGM、テレビ、リクライニング式チェアなどを設置したお部屋を用意するなど、ゆったりと過ごしていただくための対応もできるようになってきています。また、看護師は、点滴中のわずかな変化や薬の副作用に即対応できるように、常に患者さんの近くにいます。一口に乳がんといっても、いろいろなタイプがあります。個人個人に適した乳がんの治療法を主治医とよく相談し決定してください。
Q.
胸に6cmのしこりがあり、乳がんと診断されました。乳房切除を勧められましたが、乳房を残す治療は可能でしょうか?教えてください。(41歳、女性)
A.
ある程度大きくなった乳がんに対しては、基本的に乳房切除術が勧められます。ただ、最近は手術前に抗がん剤を使ってがんを小さくすることで乳房を残せるようになってきました。この方法は、術前化学療法と呼ばれ、外来で治療が可能です。しかし、抗がん剤には副作用があることやすべてのしこりが小さくなるわけではなく、その効果には個人差があります。私たち看護師は、チーム医療の一員として治療中の不安や副作用などの苦痛・不快感を少しでも解消できるように、情報を提供しながらサポートしていきます。何よりも患者さんご自身が納得して手術を受けることが必要です。担当医の先生とよく相談し、治療を選択してください。
Q.
乳がん検診について教えてください(46歳・女性)
A.
乳がん検診は、乳がんを無症状の段階で早期発見をするために行うものです。2000年3月には、厚生労働省から視触診とマンモグラフィ(乳房X線撮影)を併用した検診が提言されました。一般的な医療機関で行う乳がん検診は、問診と視触診、マンモグラフィ、超音波検査などを行い、その結果、異常が認められる場合には細胞診検査など追加します。
高知市の乳がん検診は、高知市保健所健康づくり課を窓口として40歳以上の女性を対象とし、市内8ヶ所の施設で行っています。内容は、視触診とマンモグラフィであり、年齢によりマンモグラフィの撮影枚数は異なります。乳がん早期発見のために、ぜひとも検診を受けられますようお勧めします。
Q.
乳がん検診は何歳ぐらいから始めたらよいのでしょう?また、自己触診についても教えてください。(36歳、女性)
A.
乳がんは、自分で乳房を観察することがきっかけとなって、発見することのできる病気です。そして、少しでも早い段階で治療を開始すれば、根治する可能性が高いがんです。したがって、30歳を過ぎたら、早期発見のためにも、ぜひ定期的に自己触診を開始してください。なお、乳がんが多くなるのは40歳を過ぎてからです。40歳を過ぎたら、自己触診に加え、病院あるいは検診施設でマンモグラフィ(乳房のX線撮影)を受けることをおすすめします。最近、高知県では40歳以上の方を対象にマンモグラフィ検診が実施されているので、利用されるとよいでしょう。検診は基本的に2年に1回ですが、ご家族に乳がんの方がいる、あるいは良性のしこりがあるなどや乳がんの危険性が高い方、不安な方などは1年に1回としてください。
自己触診は乳房の張りが少なくなる月経終了1週目ごろ、入浴時に行いましょう。体に石鹸をつけ、洗顔の要領で指をそろえ乳房をまんべんなく、肋骨を感じるような強さで撫でます。このとき必ず右の乳房は左手で、左の乳房は右手で調べます。すべらした指に何かひっかかる感じがしたら、要注意です。ただし、この方法は、大きな乳房の人には、わかりにくいかもしれません。そういう人は検診する方の腕を挙げるか、湯船につかりながら行ってください。石鹸を流したら、鏡に向かって両手を挙げ、えくぼがないか、皮膚の色が変化していないか、乳首が横を向いていないかなどを確かます。最後に、乳首を指でしぼり、分泌液がないかを確認すれば終了です。もし、なにか気になることがあれば、早めに専門病院で検査を受けてください。
Q.
最近、右胸のしこりに気づきました。乳がんでしょうか?自分で触って、がんか、がんでないかを見分けることはできますか?(46歳、女性)
A.
自分でしこりを見つけた場合、そのしこりが乳がんであるか、あるいはがんとは違う良性の病気であるかを、見極めるためには、いくつかの検査を行う必要があります。触っただけでは、専門医であっても、乳がんによるしこりなのか、その他のしこりなのかを簡単に区別できないことがあります。したがって、触った感じ、見た感じなどで安易に自己判断をしないでください。あなたの場合、世間でよく言われる乳がん年齢に達しています。自分のためだけではなく、あなたの周りの人たちのためにも、ぜひ専門医を受診し、きちんと検査を受けて、正確に診断してもらってください。
Q.
乳がんの定期検診はどの科を受診したらよいのでしょうか(45歳、女性)。
A.
乳がんは女性特有の病気のため“婦人科を受診する”と思っている方が意外と多いようですが、 現在、日本で乳がんを主に担当しているのは外科です。ただ、外科の中でも乳腺はやや特殊な領域であり、受診されるのなら乳腺外科の専門医のいる所が最もよいでしょう。外科以外では、婦人科や放射線科などでも診療を行っている施設があります。現在、日本乳癌学会のホームページでは、乳腺専門医の氏名、所属施設などが公表されていますので、それを参考にすればよいと思います。マンモグラフィや超音波を使った画像診断を定期的に受けることで乳がんの早期発見率は飛躍的に高まります。40歳を過ぎたら、1年に1回は画像診断による検診を受けましょう。
Q.
乳房の自己触診法について
A.
乳房の自己触診は乳房の張りが少なくなる月経終了1週目ごろ、入浴時に行うのがよいでしょう。体に石鹸をつけ、洗顔の要領で指をそろえ乳房をまんべんなく、肋骨を感じるような強さで撫でます。このとき必ず右の乳房は左手で、左の乳房は右手で調べます。すべらした指に何かひっかかる感じがしたら、要注意です。ただし、この方法は、大きな乳房の人には、判りにくいかもしれません。そういう人は検診する方の腕を挙げるか、湯船に浸かりながら行ってください。石鹸を流したら、鏡に向かって両手を挙げ、えくぼがないか、皮膚の色が変化していないか、乳首が横を向いていないかなどを確かます。最後に、乳首を指でチュッとしぼり、分泌液がないかを確認すれば終了です。もし、なにか気になることがあれば、早めに専門病院で検査を受けてください。
Q.
乳がんになりやすいのはどんな人でしょうか?また、ならないようにするにはどうすればよいでしょうか。
A.
表に示した8つの因子を持つ人が乳がんになりやすいと考えられています。しかし、これらの項目にあてはまることが多いから必ず乳がんになるわけではなく、ゼロであっても絶対大丈夫というわけではありません。残念ながら、乳がんはどんな人でもなる可能性があり、ならない方法はありません。今、日本人女性の30人に1人は生涯の間に乳がんになるといわれています。実際、1年間で乳がんと診断される方は約3万人、死亡する方は約1万人であり、乳がんはわが国の壮年層(30〜64歳)女性のがん死亡原因のトップになっています。しかし、乳がんは、しこりが小さいうちに見つけて治療すれば90%近くは治る病気であり、決して怖い病気ではありません。そのためには、日ごろから自己検診を行うこと、マンモグラフィ(乳房専用のX線装置)、超音波などの画像診断による検診を1年に1回定期的に受けることをお勧めします。ただし、自分でふれて気になるしこりや症状がある場合は検診を待たず、すぐに乳腺専門医のいる医療機関を受診してください。なお、乳がんは女性特有の病気なので受診は“婦人科”と思っている人が多いようですが、通常、外科(乳腺外科)で診療を行っています。病院によっては婦人科、放射線科の場合もありますが、基本的に外科(乳腺外科)を受診してください。
表 乳がんになりやすい人
1. 年齢40歳以上
2. 30歳以上で未婚
3. 初産が30歳以上(あるいは出産経験がない)
4. 閉経年齢が55歳以降
5. 肥満(特に50歳以上、標準体重の50%以上)
6. 良性の乳腺の病気になったことがある
7. 家族(特に母、姉妹)に乳がんになった人がいる
8. 乳がんになったことがある
Q.
母親が2年前に乳がんにかかりました。私も乳がんになるのではととても心配しています(27歳、女性)。
A.
親、姉妹、子供などが乳がんにかかられた場合には、そのご家族の方は乳がん検診を定期的に受けられる方がよいと思います。なぜなら、ご家族にがんの病歴がある方は、ない方よりも統計上乳がんにかかる確率が高くなるからです。あなたには、視触診だけではなくマンモグラフィや超音波などの画像を用いる検診をお勧めします。20歳代では、視触診と超音波検査だけでも充分かもしれませんが、将来比較できるように元となるマンモグラフィを残しておくことは重要でしょう。なお、30歳代になったら、年1回の乳がん検診を開始した方がいいかもしれませんね。検診は乳腺専門医療機関で行うことをお勧めします。
Q.
乳がんと閉経の時期は関係ありますか?教えてください(48歳、女性)。
A.
ご質問のとおり、乳がんは卵巣機能が低下する閉経と何らかの関連があるものと考えられます。日本での乳がん罹患率を年齢別にみると、30歳代から増え始めています。そして、閉経前後の45〜50歳あたりにピークを迎え、その後は80歳くらいまでほぼ一定で推移しています。このように、乳がんは閉経期、または閉経後に発症すること、また体内のホルモンの影響を受けやすいがんであることから閉経状況と関係があると考えられます。一方欧米では日本と異なり、閉経前より閉経をした後の50歳〜80歳に乳がんのピークがあります。なお、最近の日本の乳がん罹患率は徐々に欧米のパターンに近づきつつあり、今後は閉経後の乳がんが増加するかもしれません。
Q.
乳房に異常を感じたときはどの科を受診したらよいのでしょうか。教えてください(47歳、女性)。
A.
現在、日本で乳がんを主に担当しているのは外科です。ただ、外科の中でも乳腺はやや特殊な領域であり、受診されるのなら乳腺外科の専門医のいる所が最もよいでしょう。外科以外では、産婦人科や放射線科などでも診療を行っている施設があります。乳腺疾患の診断には専門の知識と乳房X-線撮影(マンモグラフィ)や超音波などの設備が必要なため、それらの整った施設を受診されることをお勧めします。現在、日本乳癌学会のホームページでは、乳腺専門医の氏名、所属施設などが公表されていますので、それを参考にすればよいと思います。
Q.
しこりは触れませんが、最近、乳首から血液の混じった液が出ています。どんな病気があるのでしょうか?教えてください(48歳、女性)。
A.
乳首より血液の混じった液が出るときは、乳がんのような悪性疾患と乳管内乳頭腫、乳腺症などの良性疾患の場合があります。悪性と良性の鑑別のためには、分泌液の細胞診や超音波、マンモグラフィ、乳管造影などの画像検査、乳管内視鏡などが必要です。異常分泌の原因として最も多いのは、良性の乳管内乳頭腫ですが、この場合は手術により完全に治すことができます。あなたの場合はしこりがないということなので、乳がんとしても、ごく早期の乳がんと考えられます。この場合も、適切な治療を行えばほぼ治癒しますので、乳腺専門医を受診されることをお勧めします。
Q.
最近、乳首から白い液や透明な液が出ます。がんでしょうか?教えてください(32歳、女性)。
A.
診察してみないと分かりませんが、乳首から白色の分泌液があってもがんとの関連は少ないと思います。わずかな量であれば、正常な人でも分泌はみられますので心配ありません。しかし、妊娠や授乳に関係ない時期に白いミルク様の分泌がたくさん出る場合は、服用している薬の副作用やホルモンの影響などが考えられますので診察が必要です。乳首からの分泌で心配なのは、血液の混じったときであり、赤かったり、黒かったり、茶色だったりと色々です。この場合はマンモグラフィや超音波を使って、乳腺に異常がないことを確認することが大事です。症状が悪化したり、変化が現れるようでしたら、乳腺専門の医療機関を受診する事をお勧めします。
Q.
最近、テレビ、雑誌などでマンモグラフィ検診の必要性がよく言われています。マンモグラフィ検診について教えてください(48歳、女性)。
A.
マンモグラフィ検診は、乳房専用のX線撮影であるマンモグラフィを用いる検診です。欧米では、最も一般的な検診として普及しており、乳がんによる死亡を減少する効果が確認されています。さて、日本では1996年に胃がんを抜いて乳がんが女性の悪性腫瘍罹患率で第一位になりました。2003年のデータでは約38,000人の方が乳がんにかかり、約9800人の方が亡くなっています。乳がんは今後さらに増加することが予想され、2015年には約48,000人の方が乳がんにかかり、亡くなる方もそれにつれて増えると考えられています。しかし、乳がんは早期に発見、治療をすれば、ほとんど治ってしまいます。この早期発見のために最も威力を発揮するのがマンモグラフィです。マンモグラフィは、乳房にできる病気をほとんど見つけることができ、しこりとして全く触れないごく早期の乳がんを発見することができます。通常の検査では、更衣、撮影、フィルム確認まで15〜20分程です。放射線被曝は、乳房だけの部分的なもののため通常問題はありません。また、撮影時に乳房圧迫による多少の痛みを伴うときがありますが、適切な圧迫により、良い写真ができ、放射線被爆もさらに少なくなります。以上のように、マンモグラフィはとても優れた検査ですが、若年者、授乳中の方、手術後の方、乳腺の量が多い方などでは乳房の異常を映せない場合もあり、決して万能ではないことも追加しておきます。なお、自分で触れて乳房に異常があると思われる方は、マンモグラフィ検診を待たずに、すぐに乳腺専門の医療機関を受診し、診察を受けてください。
Q.
乳がんの画像検査について教えてください(45歳、女性)。
A.
乳がんの画像検査にはマンモグラフィ、超音波、MRI(磁気共鳴画像)、CTなどがあります。マンモグラフィは乳房専用のX線撮影のことであり、乳がんをはじめ、乳房にできる病気をほとんど見つけることができ、しこりとして触れないごく早期の乳がんも発見できます。超音波もマンモグラフィ同様、手に触れない数mmのしこりを見つけることができ、放射線被爆を避けたい方、若い方、マンモグラフィの乳房圧迫に耐えられない方などに適しています。これに対しMRI、CTはマンモグラフィ、超音波と比べ、費用は高く、検査時間も長くかかり、一般検診には必ずしも適していません。しかし、しこりが乳房の中をどのように広がっているかを詳細に見ることができるため、手術術式の決定などに有用な検査です。
Q.
最近、マスコミでよく取り上げられているマンモグラフィ検診について教えてください(52歳、女性)。
A.
マンモグラフィ検診とは、乳房専用のX線撮影であるマンモグラフィを用いる検診です。マンモグラフィは、乳房にできる病変をほとんど映し出し、しこりとして全く触れないごく早期の乳がんを見つけることができます。通常、更衣、撮影、フィルム確認まで15〜20分程です。マンモグラフィはとても優れた検査ですが、若年者、授乳中の方、手術後の方、乳腺の量が多い方などでは乳房の異常を映せない場合があります。なお、自分で触れて乳房に異常があると思われる方は、マンモグラフィ検診を待たずに、すぐに乳腺専門の医療機関を受診し、精密検査を受けてください。また、マンモグラフィの放射線被曝は乳房だけのため、通常は問題ありません。
Q.
乳がんの検査には超音波とマンモグラフィがあると聞きました。どちらを受ければよいのでしょうか。教えてください(42歳、女性)。
A.
どちらも重要な検査であること、またそれぞれに異なった利点があるため、できれば両方を受けられるほうがよいと思います。超音波では、数ミリの手に触れないしこりを見つけることができ、放射線被爆を避けたい方、若い方、マンモグラフィの乳房圧迫に耐えられない方などに適しています。マンモグラフィは、無症状の早期乳がん-特に石灰化病変-の発見に有効です。石灰化病変は、超音波では見つからないことが多く、マンモグラフィの独壇場です。乳房が大きい方、閉経後で乳腺が萎縮した方などはマンモグラフィに適しています。また、マンモグラフィは過去のフィルムと比較することが出来るため、検診にも最適です。
Q.
マンモグラフィについて教えてください(48歳、女性)。
A.
マンモグラフィーは乳房専用のX線装置を使って撮影される特殊なレントゲン検査であり、専門の医師または技師によって撮影され、乳腺外科医や放射線科医などによって読影されます。マンモグラフィーの最大の利点は、しこりとして触れる前の無症状の早期乳がんを発見できることです。通常、撮影は乳房を2枚の板の間にはさんで圧迫し、左右の乳房をそれぞれ縦横の2方向から計4回行います。放射線被曝に関しては、乳房だけの部分的なものであり骨髄など全身への影響はありません。マンモグラフィ検査を希望されるかたは乳腺専門の医療機関や、検診施設を受診してください。なお、肺の写真を撮る一般的な胸部X線検査では、乳がんの診断はできないのでご注意ください。
Q.
乳房に痛みや張り感があり、特に生理前には痛みが強くなります。このような症状は乳がんと考えるのでしょうか?教えてください(41歳、女性)。
A.
痛みや張りは、乳腺外来で最も多い症状です。しかし、乳がんの症状として、痛みが密接に関わることは意外と少なく、良性の変化である乳腺症が第一に考えられます。乳腺症の特徴としては、生理前に痛みが強くなり、生理が始まると和らぐなどの周期性があります。この他には乳腺の炎症も考えられますが、この場合は、皮膚に赤みや熱感が見られます。しかし、痛いという症状だけで乳がんが発見された方もおり、詳しく検査をする事が最も重要です。自己判断はせずに、乳腺専門施設で、マンモグラフィ(乳房専用X線装置)や超音波検査などを受けられることをお勧めします。
Q.
乳がん検診で乳腺症といわれました。乳腺症について教えてください。
A.
乳腺の病気の中で、最も多い良性の病気です。といってもホルモンの影響による女性特有の変化であり、病気というより生理的なものです。未婚女性や授乳経験のない30〜40歳代に多く見られます。症状としては乳腺に凸凹のある境界不鮮明なしこりをつくり、そのしこりが生理前に張ってきたり、痛みが強くなってきたりします。しかし、皮膚が赤くなったり、へこんだりするような変化は見られません。通常、治療の必要は全くありませんが、痛みがひどい場合には、薬物治療を行うときもあります。なお、触れただけでは乳腺症と乳がんは区別がつきにくい場合があります。したがって、乳腺症といわれたら超音波、マンモグラフィなどの精密検査を是非受けてください。
Q.
先日、ある病院で乳がんといわれました。乳房を全摘するのか、残すのか、迷っています。乳房温存手術は希望すれば誰でも受けることができるものでしょうか?(39歳、女性)。
A.
残した乳房にがんが再発する可能性が小さい場合には、乳房温存術の適応といっていいでしょう。しこりの大きさとしては、3cm以下が乳房温存術の一応の目安ですが、しこりの数、広がり、乳房としこりの大きさのバランスなども参考にして、術式は決定されます。しこりが大きい場合には、手術前に予め制癌剤などの治療を行って、しこりを小さくしてから乳房温存術を行うこともあります。乳房温存術を行う場合は、残した乳房にできるだけ再発しないように十分考慮すべきです。したがって、すべての人が乳房温存術を受けられるとは限りませんので、その点はご理解ください。
Q.
乳房温存療法について教えてください。
A.
“乳房温存療法”は、しこりをくりぬく乳房部分切除、脇のリンパ節を取るリンパ節郭清、残した乳腺への放射線治療の三つの方法からなるもので、女性の象徴である乳房をできる限り残し乳癌を根治しようとするものです。現在、早期乳癌ならば、乳房をすべて取る乳房切除術でも乳房温存療法でもその成績には差がありません。ただし、しこりをくりぬいても残した乳腺にできるだけ癌が残らないことが大切であり、マンモグラフィ、超音波、乳房MRIなどで乳房内の癌の広がりを手術前に正しく把握することが重要です。また、脇のリンパ節は転移がなければ取る必要はなく、最近では色素などを利用して手術中にリンパ節転移の有無を診断できるようになっています。放射線治療はどのような人が受けなくてよいかまだ分かっておらず、原則として受けるべきです。