治療について
乳がんに対する治療法は、局所療法(手術・放射線)と全身療法(化学療法・ホルモン療法)に分けられます。
ごく早期の乳がんは手術のみで治すことが出来ますが、進んだ乳がんになるといろいろな治療を組み合わせて治癒率を高くしていきます。
●手術
●放射線
●化学療法
●ホルモン療法
[放射線治療]
放射線治療は、温存術後に乳房の中での再発を防ぐための照射、乳房を切除した後に胸壁、リンパ節へ再発しないための照射、そして再発したときにリンパ節、脳、骨などへ行う照射などがあります。乳房温存術後の放射線治療によって乳房の中の再発は1/3に減少します。
また、乳房切除術を行ってもしこりが大きかった場合やリンパ節転移が多い場合には、胸壁と鎖骨上リンパ節への再発を防ぐために放射線治療を行います。脳転移に対しても放射線治療は有効であり、痛みを伴うような骨転移に放射線治療を行えば、痛みを軽くすることが可能です。
[化学療法]
いわゆる抗癌剤による治療を化学療法と言います。乳がんは他の部位のがんと比べて抗癌剤が良く効くのが大きな特徴です。再発の可能性が高いといわれる乳がんーしこりが大きい場合、若年者(35歳未満)、リンパ節転移のある場合―では、手術だけでは再発する可能性が高くなります。これらの乳がんに対して、手術前または手術後に化学療法を行うと、再発は半分以下に抑えることができます。この効果は多くの臨床試験によって証明されています。
また、手術前に化学療法を行うと、大きなしこりを小さくすることができ、乳房温存術が可能になることがあります。抗癌剤には、点滴で静脈に注射する薬と飲み薬の2種類があり、乳がんに良く効く抗癌剤の多くは点滴です。点滴の抗癌剤には、いろいろな副作用がありますが、最近は副作用を軽くする良いお薬があるので、入院の必要はなく、治療は外来通院で行えます。なお、脱毛を予防するお薬はありませんが、治療終了2−3ヶ月で髪の毛は徐々に生え始め、その後は完全に元通りになりますので心配しないでください。
[ホルモン療法]
乳がんはホルモン剤がよく効く場合と全く効かない場合があります。これはホルモンレセプターという物質を検査すれば分かり、ホルモンレセプターには、エストロゲンレセプターとプロゲステロンレセプターの2種類があります。ホルモン療法が効くのは、この2種類とも陽性またはいずれか1種類が陽性の人です。ホルモン療法のお薬には、注射と内服薬があります。注射は、閉経前の乳がん患者さんにだけ行い、1ヶ月または3ヶ月おきに1回注射します。
内服薬は種類が多く、閉経前でも後でも効くお薬と閉経後だけに効くお薬があります。ホルモン療法の期間は、手術後5〜10年間と長期ですが、たくさんの再発を抑えます。また、もし再発した場合でも、これまでに使っていないホルモン剤を使えば、よく効く場合があります。